電気工事の作業着に必要な基本性能とは?選び方や安全規格について解説

日本被服工業株式会社
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電気工事の作業着に必要な基本性能とは?選び方や安全規格について解説

電気工事の作業着に必要な基本性能とは?選び方や安全規格について解説

「どの作業着が電気工事現場に適しているのか全くわからない」「安全基準を満たした作業着の見分け方がわからず、適当に選んでしまいそう」といった声をよく耳にします。

これらの悩みは、電気工事という専門性の高い分野において、作業着に求められる特殊な機能や規格について十分な情報がないことが原因です。

本記事では、電気工事の作業着に必要な帯電防止機能や絶縁性能といった基本性能から、上衣やズボンの具体的な選び方、JIS T8118制電作業服の基準や労働安全衛生法に基づく安全要件まで、作業着選びに必要な知識を体系的に解説いたします。

電気工事現場での安全確保は作業者の生命に直結する重要な要素であり、適切な作業着選びがその基盤となることから、正しい知識の習得が不可欠です。

電気工事の作業着に必要な基本性能とは

電気工事現場では、一般的な作業着では対応できない特殊な危険が存在するため、専用の機能を持った作業着が必要不可欠です。

電気工事の作業着には、主に帯電防止機能と絶縁性能という2つの基本性能が求められます。

帯電防止機能は、作業中に発生する静電気を適切に除去し、電気火災や爆発のリスクを軽減する重要な機能です。一方、絶縁性能は作業者の身体を電気回路から遮断し、感電事故を防ぐための防護機能として機能します。

帯電防止機能(JIS T8118規格)の重要性

帯電防止機能は電気工事現場での静電気による火災や爆発事故を防ぐために不可欠な機能です。

電気工事現場では、作業中の摩擦や移動によって作業着に静電気が蓄積されやすく、この静電気が引火性ガスや可燃性物質に放電すると深刻な事故につながる危険性があります。

特に、配線作業や電気設備の点検時には、わずかな静電気放電でも電子機器の故障や火災を引き起こす可能性が高まるため、作業着の帯電防止機能が重要な役割を果たします。

これらの基準により、作業着は適度な導電性を保ちながら静電気を安全に除去できるのです。表面抵抗値が低すぎると感電リスクが高まり、高すぎると帯電防止効果が不十分になるため、この数値範囲の維持が極めて重要になります。

JIS T8118について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

https://www.nihonhifuku.jp/columns/what-is-jist8118/

絶縁性能と感電防止対策

絶縁性能は作業者の身体を電気回路から遮断し、感電事故による重篤な傷害や死亡を防ぐための最も重要な防護機能です。

電気工事現場では、高電圧線や活線作業において作業者が電気に触れるリスクが常に存在しており、わずかな接触でも心停止や火傷といった深刻な事故を引き起こす可能性があります。

特に、湿度の高い環境や汗をかいた状態では人体の電気抵抗が低下するため、通常よりも感電の危険性が高まることから、作業着による絶縁対策が生命を守る最後の砦となるのです。

感電防止の流れとしては、電気との接触 → 絶縁材料による電流の遮断 → 作業者の身体への電流流入阻止という仕組みで機能します。ただし、絶縁性能は完璧ではなく破損や劣化により効果が低下するため、定期的な点検と適切な保管、洗濯方法の遵守が不可欠です。

絶縁性能を備えた作業着の適切な選択と管理は、電気工事士の安全確保において最も基本的かつ重要な対策といえるでしょう。

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電気工事作業着の種類と選び方

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電気工事現場で使用される作業着は、上衣とズボンの2つの主要カテゴリーに分けることができます。

上衣では、動きやすさと安全性を両立させたジャケットやブルゾンタイプが一般的で、帯電防止機能や耐久性が重要な選択基準となります。

一方、ズボンについては収納力に優れたカーゴパンツや機能性作業ズボンが主流で、膝部分の補強や適切なフィット感が作業効率に大きく影響するでしょう。

それぞれの作業着選びでは、JIS規格への適合はもちろん、現場環境や作業内容に応じた機能性の見極めが欠かせません。それでは、具体的な選び方のポイントについて詳しく説明していきます。

上衣(ジャケット・ブルゾン)の選び方

電気工事用の上衣選びでは、帯電防止機能を持つジャケットやブルゾンを選択することが最も重要です。これは電気工事現場特有の静電気リスクから作業者を守るために欠かせない機能となります。

適切な上衣を選ぶ理由として、電気工事現場では配線作業や機器取り付け時に頻繁な腕の上下運動が必要で、動きやすさと安全性の両立が作業効率に直結するためです。

また、工具や部材との接触による摩擦で静電気が発生しやすい環境であることから、JIS T8118規格に適合した制電性能を持つ素材の選択が必須となります。

電気工事の安全性と作業効率を両立させるためには、これらの機能を総合的に評価して上衣を選択することが重要です。価格だけでなく、現場での実用性と安全基準への適合性を最優先に考慮しましょう。

作業ズボン・カーゴパンツの選び方

電気工事用の作業ズボン・カーゴパンツは、動きやすさと安全機能を兼ね備えた専用製品を選ぶことが重要です。

電気工事現場では、しゃがみ作業や階段昇降が頻繁に発生するため、膝関節の動きを妨げない設計と帯電防止機能の両方が求められます。

一般的な作業ズボンでは、静電気による火災リスクや動作制限により作業効率が大幅に低下してしまうでしょう。また、工具や部材を安全に携行するための収納機能も、電気工事士にとって欠かせない要素となります。

カーゴパンツの場合、サイドポケットの深さと開口部の形状も重要な選択基準となります。工具の出し入れがスムーズに行える設計で、ポケット内部にペン差しや小物仕切りがあると現場での利便性が向上するでしょう。

適切な作業ズボン・カーゴパンツの選択により、電気工事現場での安全性確保と作業効率向上を同時に実現できるのです。

電気工事作業着の安全規格と認証

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電気工事現場では、作業者の安全確保のために法的基準を満たした作業着の着用が義務付けられています。特に重要となるのが、制電性能を定めたJIS T8118規格と、労働災害防止を目的とした労働安全衛生法の安全要件です。

これらの規格と認証を理解することで、安全性と法的コンプライアンスを両立した作業着選びが可能になるでしょう。それでは、各規格の具体的な内容について詳しく説明していきます。

JIS T8118制電作業服の基準

JIS T8118制電作業服の基準は、電気工事現場での静電気災害を防止するための重要な技術規格です。

この規格が制定された理由は、電気工事作業中に発生する静電気が引き起こす火災や爆発事故を未然に防ぐためです。静電気による災害は一瞬で発生し、重大な人身事故や設備損傷を招く可能性があることから、厳格な基準設定が必要となっています。

これらの試験に合格した作業服のみがJIS T8118適合品として認定され、電気工事現場での使用が推奨されます。適合品には専用のラベルや認証マークが付与されているため、購入時にはこれらの表示を必ず確認しましょう。

JIS T8118制電作業服の基準を満たした作業着を選択することで、電気工事現場での静電気災害リスクを大幅に軽減し、安全な作業環境の構築が実現できます。

労働安全衛生法に基づく安全要件

労働安全衛生法に基づく安全要件では、電気工事従事者の生命と健康を守るための法的義務として、適切な保護具の着用が明確に定められています。

この法的要件が設けられている理由は、電気工事現場における感電事故や電気火災が重篤な労働災害につながる可能性が極めて高いためです。

労働安全衛生法に基づく安全要件を遵守することは、電気工事現場での安全確保と法的コンプライアンスの両面において必要不可欠な義務なのです。

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まとめ

電気工事の作業着選びにおいて、最も重要なポイントは安全性と機能性の両立です。本記事でご紹介した内容を踏まえ、実際の作業着選びに活かしていただくための要点をまとめました。

まず、作業着選びの基本となるのが帯電防止機能と絶縁性能の確認です。JIS T8118規格に適合した制電作業服を選ぶことで、静電気による火災や爆発のリスクを大幅に軽減できます。

特に電気工事現場では、わずかな静電気でも重大な事故につながる可能性があるため、この機能は妥協できない要素となります。

電気工事の現場では、適切な作業着選びが作業者の命を守る重要な防護壁となります。今回得た知識を活用し、安全で快適な作業環境の実現に向けて、慎重かつ的確な作業着選びを実践していただければと思います。